ふみ子さんの切干大根が美味しいワケ

 2022年3月19日

黒毛和牛を育成する 三塚牧場 訪問記

 

 

伊豆沼のほとりの農産物直売所で

たまたま手にした切り干し大根。

甘く柔らかく

びっくりするような美味しさでした!

 

袋のラベル「生産者:三塚ふみ子」

を頼りに探したところ、

登米市迫町で黒毛和牛を育てている

「三塚牧場」のおかみさんと判明。

 手作りのため量が限られるところ

無理を言ってお願いし

「ご用意できましたよ」との

ご連絡を頂いた3月中旬、

三塚牧場さんを訪ねました。

 

当初はただ「おいしい」という理由だけで

仕入れた切り干し大根でしたが、

その美味しさにはちゃんと理由がありました。

 

 

三塚牧場さんに到着して

最初に出迎えてくれたのは親子牛舎の子牛。

こちらに興味津々なようすです。

肉牛の育成は、子牛を産ませる「繁殖」と

その後の育成(「肥育」)とは

分かれていることが多いそうですが

三塚牧場さんでは近年

肥育に加えて繁殖にも取り組み

子牛が生まれてから肉牛として出荷するまでを

一貫して手がけています。

まずは牛の母子が暮らす繁殖用の牛舎に

案内していただきました。

三塚浩之さんの見守りのもと

子牛にミルクをあげてみました。

グイグイと飲む力強さに人間の子供たちは

「すごい力〜!」とびっくり。

浩之さんのお父さんで、三塚牧場創業者の

三塚芳毅(よしたけ)さんに

牛の飼育について少しお話を伺いました。

 

「うちではモネンシンはやらないんです。

使っている和牛農家も多いんですけど」

 

モネンシンとは、家畜の成長促進や病気の予防を

目的として飼料に添加する抗生物質の一つ。

肉量が増える、飼料の量が抑えられる、

原虫病を予防できるなどの

効果があるとされています。

 飼料への添加は、EUではすでに禁止ですが

日本・アメリカ・オーストラリアでは

許可されています。

 

「モネンシンを入れてた子牛が

来たことがあってね。

うちではモネンシンやらなかったら

もうブルブルと体が震えて、体調崩して、

しばらく大変だった。

薬害だよね。怖いな、と思ったよ」

 

「モネンシンやれば、それは肉量も

増えたりするんだろうけど。

でも、子供にも孫にも、安心して

食べさせられる肉を作りたいよね」

 

これまで長年牛肉を食べてきながら、

全く知らなかったお話を伺うことができました。

 

さて、目的の切り干し大根です。

黄金色でつやつや。すでに美味しそうです。

この大根はふみ子さんが畑で作られたもの。

栽培し収穫して、手で切って、干して...

の完全手作り品です!

早速、この大根が育った畑を見せて頂きました。

杉林と梅の木に囲まれた、ふみ子さんの畑。

まだ植物が芽を出すには寒すぎる時季でしたが、

きれいに整えられて

春の始動を待っているようでした。

 畑には化学肥料は使わず

有機肥料のみを使用しているそうです。

 

「化学肥料を使っていたこともあるんだけど、

野菜の根っこの形がなんだか変わってしまって。

やっぱり、自然のものから作った

肥料にしようと思ったの」

 

「子供や孫にも、誰にでも安心して

食べてもらえる野菜をね、

やっぱり作りたいなと思います」

 

と芳毅さんと同じことを言われました。

最後に、ご自宅からは少し離れた

肥育牛舎を見せて頂きました。

三塚さんではお米も作られていて、

毎年、東京ドーム7個分の面積の

田んぼからワラを集め、

牛の飼料にしています。

大きな稲わらロール。一個約200kgとのこと。

広くて明るい牛舎に100頭近い牛がいます。

餌は、稲わらを中心に粉炭・ビール粕・

もち米をまぜたものだそうです。

成牛も好奇心旺盛のようで、近づくと

柵の間からみんなで頭を出してきます。

ところで、この牛舎はほとんど臭いがしません。

浩之さんにそう言うと

 

「牛は家畜の中で最も臭わないと

言われてますけど...

うちは、糞が後ろに自然に落ちるようにしたり、

集めた糞はすぐ堆肥にしたりしているので、

特別臭いが少ないかもしれません」

 

とのこと。牛糞から作った堆肥は、

地元の農家さんの田んぼや畑の

肥料となるそうです。

稲わらが牛のえさとなり、

その牛たちの糞が田畑の肥料となる...

という地域の循環システムが

三塚牧場さんの手で実現しています。

 

 

「子供や孫にも安心して

食べさせられるものをつくりたい」

 

 牛の育てかたにも野菜の作り方にも、

自然を無理にねじまげない、

自然から無理に搾取しないという

三塚家の皆さんの一貫した姿勢を感じました。

 

この春、浩之さんと妻の香子さんは

新たな試みに着手しました。

牧場と隣接する築40年の

地域の集会所をリノベーションし

三塚牧場の牛肉と野菜を使った

料理が楽しめるカフェスペースと

人々が集うことのできるシェアスペースが

合体した施設「シルクロ」です。

2022年秋のオープンを目指しているとのこと。

今からとても楽しみです。

 

三塚家のみなさん、

本当にありがとうございました。

 またお伺いしたいです。


 

それから約3週間後の4月8日

ふみ子さんの畑では梅が七分咲きでした。

畑もいよいよ始動です。